日本人の死生観

神道、アニミズム、シャーマニズム。日本人なら理解しておくべき3つの信仰

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日本古来の信仰が「神道」であると知っている方も多いでしょう。一方で、世界的な観点から「神道」は「アニミズム」のひとつであると指摘されることや、「シャーマニズム」が入り組んだものだと言われることも珍しくありません。現代の日本を生きる我々として、これらの知識を身につけておくことは非常に有益なことです。古来から日本で信仰されてきた「神」とは、そして信仰とは何かを知り古代日本から続く人々の思いを感じてみましょう。

古代日本の信仰「神道」とは

「神道」の起源は古く、その始まりは縄文・弥生時代にまで遡ると言われています。キリストやブッダのように導き手が存在するのではなく、生活習慣や自然そのものに「神」が存在すると考えるのが「神道」の特徴です。「神道」という言葉そのものは奈良時代に編纂された「日本書紀」に初めてその記述が見られます。奈良時代に中国から「仏教」の教えが日本に入り、やがて「神道」のように拡大していったのです。「神道」はいわゆる多神教とされ、氏神信仰の色も強いと言われています。これは「神道」の発展が古代日本の豪族の成立と発展に関係しているから、と考えられているのです。自然そのものから神が生まれ、勇者が死後神へと変化するという形式も「神道」では珍しくありません。このように人間の生活や習慣そのものに多くの「神」が息づいていることから、「八百万の神々」という言葉も生まれています。「神道」は地域社会を守りながらも、人間に恩恵を与える「神」が祀られているのです。

遠い昔、私たちの祖先は、稲作をはじめとした農耕や漁撈などを通じて、自然との関わりの中で生活を営んできました。自然の力は、人間に恵みを与える一方、猛威もふるいます。人々は、そんな自然現象に神々の働きを感知しました。また、自然の中で連綿と続く生命の尊さを実感し、あらゆるものを生みなす生命力も神々の働きとして捉えたのです。

https://www.jinjahoncho.or.jp/shinto/shinto_izanai

全ての宗教の発生「アニミズム」の思考とは

現代世界に生きる我々と異なり、古代の時代に生きる人々にとって自然は脅威の対象であり、同時に大いなる恵みを与えてくれるものでした。時に荒ぶることもあれば、優しさを感じさせる自然そのものを信仰することは、決して珍しいことではなかったのです。この姿がいわゆる、「アニミズム」と言われる宗教的なものの最も小さい形と言われています。「アニミズム」は古代日本の「八百万の神々」のように、自然そのものに神が宿り、人間がそれに霊的信仰を捧げるというものです。これは日本だけではなく、世界各地にその傾向が見られています。日本においては、アイヌ民族の信仰により強い「アニミズム」精神が見られることでも有名です。この「アニミズム」は19世紀のタイラーという学者によって発見された概念で、人間以外のものに魂や霊的存在を認める、という考えが広義のものと言われています。こうした広い観点においては、「神道」もまた「アニミズム」と深い関わりがあると言えるでしょう。

超自然的な存在の声を聞く「シャーマニズム」

人間以外の自然に霊魂や精霊を見出し、信仰の対象とする「アニミズム」。それを「八百万の神々」とし、縄文時代や弥生時代に発展させた「神道」は、さらにこの大いなる神と接触出来る者を得ようとしました。それが「シャーマニズム」の発生です。「シャーマニズム」では大いなる神の力がその者に「脱魂」「憑依」すると定義されています。代表的な日本のシャーマンといえば、卑弥呼の存在があげられるでしょう。彼女は邪馬台国の女王で、「鬼道」という独特の呪術を用いたと言われています。さらに「日本書紀」においては天照大神や、垂仁紀の倭姫・仲哀紀の神功皇后もシャーマンとして神の言葉を人々に与えたという伝説が残っているのです。人間では制御することの出来ない自然に対し、畏敬の念を抱き、その言葉を知りたいという願いが、「シャーマニズム」を生み出しました。この「シャーマニズム」の名残は沖縄地方の「ユタ」などにも見られています。

大いなる自然に神が宿る、美しい日本の信仰のかたち

大いなる自然に神が宿る、美しい日本の信仰のかたち

「神道」において神は非常に身近な存在です。それは自然の中・生活習慣に宿る人間ではない他の者に対する力の畏敬の念から生まれていると考えられます。そういった「アニミズム」的な考えは、日本人の心を豊かにしあらゆる生きとし生けるものに対する感謝の念を生み出しました。時に自然が荒ぶるときは、神そのものが怒りを感じていると古代日本の人々は考えたのです。そのため、自然の神の言葉を聞き取り、人間が生き残る道やあるべき生き方をたずねる存在が必要となりました。「神道」における神主や巫女は、こうした「シャーマニズム」の文化が成熟したかたちと考えられるでしょう。この昔ながらの素朴な優しい信仰は、現在は神社にまとめられています。そして現代でも我々はお正月などには神社に足を運び、新しい一年の息災を祈るのです。「神道」の教えは日本人の考え方にフィットしており、美しい自然と共生してきた信仰であると言えます。

まとめ

日本には「アニミズム」のような人間以外のものに魂を見出す信仰があり、やがてそれが「神道」へと確立しました。「シャーマニズム」のように大いなる神の言葉を聞く存在を媒介にしながら、共に神と歩むという姿勢は美しいものです。この日本の「神」はまだ我々の中に存在しており、神社や自然から見守っていると考えられるのではないでしょうか。興味や関心のある人は、ぜひ神社にお参りしてみたり、神主の言葉を聞いてみましょう。

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