日本は世界的にも多神教の国として知られています。1つの神様に絞られることなく、多くの種類の神様を崇めているのが特徴です。それを象徴するかのように日本には数多くの神社が造られています。では、たくさんの神様の中でも、最も多く信仰されている神様は一体何なのでしょうか。この疑問を解決するには、最も多く礼拝に訪れる方がいる神社を調べることが重要です。その神社や神様について紹介するとともに、古い歴史まで掘り下げて解説していきましょう。
日本で最も多く信仰されている神様とは?
日本で最も多く信仰されている神様は八幡神です。八幡神が住まわれている神社は日本最多であり、毎年多くの人が足を運んでいます。この八幡神社に礼拝するのを八幡信仰といい、八幡宮や若宮神社への参拝もこれにあたります。ちなみに、2番目に多いのが伊勢信仰です。これは伊勢神宮や神明宮への参拝が主に該当します。世間的には伊勢神宮の名称もよく知られていますが、八幡信仰はこれを上回るほど多くの礼拝者を得ているのが興味深いと感じるかもしれません。
続いて稲荷信仰が3番目に多いとされています。この系統もまた世間一般的には非常に有名です。該当する神社として稲荷神社や稲荷社、宇賀神社が挙げられます。八幡神社の数は、全国的に見ても断トツで多いとされています。その数は何と7,817社も存在するそうです。加えて、八幡神社は応神天皇をまつっている神社となります。この神社には、意外と知られていないさまざまな特徴がありました。
八幡神は神話には登場しない神様
世界には、その国に合ったさまざまな神話が存在します。これは、その国の宗教の基本となる大切な存在ですが、日本も例外ではなく独自の神様における伝説を語り継いできました。日本の神にまつわる話には多くの神様が登場しており、実際にこれらの神々を奉る神社は少なくありません。ただし、八幡神はこういった物語に一切登場しない神様であるという意外な一面を持ち合わせています。日本で最も多く信仰されている神様であるため、神話にも多く登場すると思ってしまうでしょう。しかし、古事記や日本書紀といった書物をみても、八幡神に関する記述はなされていません。
また、神様の中には実在した人物を奉っているものもあります。その代表的な例が菅原道真です。菅原道真は学業の神様として広く知られており、受験期になると親子が揃ってお参りに行く様子がテレビ等でうかがえます。とはいえ、この八幡神は実在した人物が神様になった姿でもありません。神話に登場せず、実在した人物でもない神様が日本で最も多くの信仰者を集めているという不思議な特徴を持っています。
八幡神は土着神かつ応神天皇の化身として知られている
八幡神の特徴は、土着神であるということです。土着神というのは、大昔からその土地に住んでいる神様を指しています。一般的には、他の神様と比べると性格がやや荒々しくなるといわれています。特に、その住んでいる土地に悪さしようと企むと容赦なく祟りにくるので非常に危険です。しかし、八幡神は単なる土着神ではなく、応神天皇の神の意を伺った化身であると考えられています。つまり、天皇の神霊を併せ持っているので性格もまた独特です。
応神天皇は弓矢の達人であると伝えられていたため、平安時代あたりの頃から多くの武士によって信仰されてきました。この動きには、清和源氏が石清水八幡宮を氏神にしたことが大きかったという背景も存在します。さらに、手柄を挙げて出世を望む武士の間で信仰が広まったことから、出世開運の神様としても知られるようになりました。これが現代にもしっかりと伝えられるようになり、たくさんの信仰者を集らせています。
日本の信仰感に似合った放生会の存在
そして、たくさんの人々から崇拝される八幡神社には伝統的な祭りがあります。その祭りを放生会といい、これが日本の宗教観に似合ったものだと認識されています。放生会は、毎年秋に行われる伝統的な例祭です。例祭であるため、八幡神社において最も重要視されている行事となります。放生会の内容としては、鳥や魚といった捕獲された生物を供養することが主要イベントとなっています。この祭りの由縁は、720年に起きた隼人の乱後の儀式です。
隼人とは古代の日本において鹿児島県に移住した人々を指しますが、720年の出来事によって多くの隼人が犠牲となりました。その隼人の魂を鎮圧する儀式が宇佐神宮で始まり、それが後に現代まで全国的に伝えられていきます。放生会は、失われた命を供養する仏教的な一面を持ち合わせています。日本では、神と仏を融合して信仰する神仏習合を重視するのが特徴的です。武勇の神でありながらも生物の魂の供養を重視しているのが、八幡神が神仏習合の観念を持つ日本人に信仰される大きな理由なのかもしれません。
まとめ
多神教である日本にはさまざまな神様が存在しますが、その中でも最も多く信仰されているのは八幡神です。八幡神は土着神かつ応神天皇の化身とされていますが、一方で神話に登場する神様や実在した偉人がそのまま神の姿になったものではありません。その神様が多くの人に信仰されているのは、神仏習合という日本独自の信仰スタイルにあります。八幡神は武勇の神として信仰されつつも、失われた命の供養を念頭に置いているのが日本人の心を掴む要因であるといえます。