日本固有の宗教である神道には、八百万の神と呼ばれるほどたくさんの神様がいるのをご存知だと思います。あまりに多いため憶えることも困難ですが、いずれも日本神話にゆかりがあり、全国各地の神社の御神体や祭神として祀られています。
現実社会に社会階層があるように神道の神々にもランクがあり、神号によって見分けることができます。ここでは知っているようで知らない、神道の神様たちのランクについて触れていきたいと思います。
神道における最高ランク皇大神
皇大神という神号は、八百万の神を抱える神道の中でも最高神を意味しており、誰もが知っている天照大御神だけのものです。天照大御神あるいは天照大神とも呼ばれていて、伊勢神宮内宮の祭神であると同時に日本神話における最も重要な神様として知られています。国生み神話で知られる父イザナギと母イザナミ、そして弟にツクヨミとスサノオの3柱を三貴子と呼びます。
天照大御神には明確な性別はありません。しかし日本書紀では女性の仕事であった機織りをしていること、スサノオが根の国に行く前に高天原に昇った際、攻めてきたと勘違いした天照大御神が武装するため、髪をほどき角髪にしたといいます。角髪は男性の髪型として知られており、非常事態だと勘違いした天照大御神が髪をほどいて角髪にしたなどから、女性であると考えられています。
天の岩戸の神隠れから太陽神であると同時に農耕神であり、さらに機織神などの神格を併せ持っており、アメノオシホミミやアメノホヒ、アマツヒコネやイクツヒコネ、クマノクスビなどの男神の母でもあります。
有名大社の祭神!ランク2位大神
神道におけるランク2位の地位にある祭神に与えられた神号が、大神です。全国各地で影響力のある祭神であり、天照大御神に次ぐ地位にあることから神道においても核心的な存在です。
伊勢神宮外宮である豊受大神宮に奉祀されている女神・豊受大神が有名であり、食物や穀物を司る神様の役割を持ちます。また三種の神器の1つである天叢雲の剣が祀られている熱田神宮の祭神熱田大神、大阪市にある住吉大社の住吉大神も広く知られています。住吉大社では底筒男命(そこつつのおのみこと)と中筒男命(なかつつのおのみこと)、表筒男命(うわつつのおのみこと)の住吉三神の総称が大神です。
忘れてはいけないのが、縁結びで知られる出雲大社の大国主大神でしょう。国譲り神話で知られており、出雲の国(葦原中国)を発展させたことで知られています。その様子を見ていた天照大御神は、自ら統治するため地上に使者を送りますが、いずれも失敗します。そこで武力に秀でた建御雷之男神(たけみかずちのおのかみ)を送り出したのです。大国主大神の息子で怪力自慢のタケミナカタが力比べで負けたことから国を譲ることになりますが、数ある国津神の中でも別格の存在です。
神仏習合で生まれた神号ランク3位の明神・権現
神号のランク3位は、明神や権現です。日本に伝わった仏教と神道による神仏習合によって生じた神号であり、仏教による神道の神様を尊重した形で使われてきました。仏教における仏や菩薩が、神道の神々の姿をとって現れたと解釈しているため、現在でも明確な区別をつけていない寺社仏閣も珍しくありません。
有名なところでは東京千代田区外神田にある神田明神が知られています。神田明神では現地に入植した出雲系氏族の祖神として大己貴命(おおなむちのみこと)や少彦名命(すくなひこなのみこと)を祭神として創建されましたが、その後に平将門を祭神に加えました。
また奈良県奈良市にある春日大社では藤原氏の祖神である天児屋根命(あめのこやねのみこと)や守護神である武甕槌命(たけみかづち)、経津主命(ふつぬしのかみ)や比売神(ひめがみ)を祭神にしています。いずれも大神に比較すると一段下の神々であり、氏神や守護神であったり、場合によっては平将門や徳川家康のように実際に生きていた人物に神号を与える場合もあります。
誰もが知ってる歴史的人物も!神号ランク4位天神
神号ランク4位の天神は、国津神や天津神に対して与えられています。仏教の仏や菩薩が人の姿として表れたと考えられた明神や権現同様に、高天原から地上に降りてきた神々の総称でもありますが、場合によっては、徳川家康や平将門のように歴史的人物に対して与えられる場合もあります。
代表的なのが藤原道真を祭神とする太宰府天満宮です。学問の神様として知られており、受験シーズンになると毎年多くの受験生や保護者らが合格祈願のため訪れます。
全国天満宮を統括する京都の北野天満宮は、清涼殿落雷発生の原因と考えられていた道真の怨念と神道の火雷神を鎮めるために創建されました。その人が持つ能力への敬意に加えて、死後の出来事などが神道の神々と結び付けられたのです。
天満宮や天神社と呼ばれる神社の多くが、藤原道真やその息子である高視、正室であった島田宣来子(吉祥女)を祭神にするなど、藤原一家を祀るのが特徴と言えるでしょう。
まとめ
神道では、与えられた神号によって神様の地位も違ってきます。天照大御神のみに与えられた皇大神を頂点に日本各地で重きをなす大神、神道の神でありながら仏や菩薩に比定された明神・権現、高天原から地上に降りたという国津神や天津神や歴史的な偉人といった地元密着型の神様まで、神号によってランク付けされています。神道における神様のヒエラルキーは、日本神話や実際の歴史における役割などが大きく影響していることがわかります。